今回、日鍼会の全国大会での講演で、200人をゆうに超える全国から集った鍼灸師の方々に、いろいろなメッセージを発信した。
その中で「ネットで叩かれて、、、」というのがある。
不妊鍼灸ネットワーク、これは今の一般社団法人JISRAMの前身なのだが、これを創設したときには私の顔写真入りで、
「こいつがこんな事をして儲けようとしている」
みたいな論調で、某妊活DVDのサイトで叩かれた。
また同業の鍼灸師からも、
「どうせ、妊娠できない人を山ほどつくっているんだろう」
などと揶揄、邪推されたりもした。私を知りもせず、調べもせずに失礼な輩もいたもんだ。
だからと言って個人的にはどってことないのだが、問題は私の立場だ。JISRAMの会長として、こんな言われ方をして黙っていると、まるで会自体が、会員全体が侮辱されているのと同じことだ。そんな腹黒い人物が会長を務めているような伝播は、会員にとって迷惑以外の何物でもない。ただネットで反論するのは大人げないし、同じレベルだと思われるし、きちんと話すべき時と状況を選ぼう、そしてそれは今回の全国大会だと考えた。
別に私を叩いた人が聞きに来ていようがいまいが、実はどうだっていい。それより公の場できちんとデータを公開することが、私なりのケリの付け方だと考えた。
そこで当院がどのような経営方針で治療を行い、且つ、実際に妊娠と非妊娠はどれくらいの割合でいるのか、正々堂々と明るみに出そうと思った。ここまで公明正大にデータを出している鍼灸院が国内にはほとんど存在しないのでは、と思う。しかも当院にはスタッフが何人もいるので、それが歪曲したデータでないことは、彼女たちに聞けばすぐに分かる。
よくいろんな不妊専門鍼灸院のHPででている「妊娠率」は、厳密な意味で、大きなバイアスがかかっている。
例えば、「3ヶ月以上継続した人の妊娠率」とか「6ヶ月以上継続した人の妊娠率」とかいった具合に。
前者で言うなら新患100人いて99人が3ヶ月未満で治療を止め、残る1人が妊娠したら、なんと妊娠率100%になる?
こういう数字の出し方ってどうなんでしょう?よく言っていることですが、
は十分に読んで頂きたいと思います。
そこで今回の講演では、全て一人残らず妊娠者比率を公表した。年齢区分はあくまで初診時の年齢であり、妊娠した時はそれよりも当然、加齢している。当院で最終的に出産に至った妊娠最高齢は46才である。
まずはNC or AIH。つまり体外受精などの高度生殖補助医療によらない妊娠者一覧だ。
35才以下61.2%が41?45は23.5%にまで落ちている。総数として、95/187ということで50.8%である。つまり2人に1人。ここでバイアスをかけてしまうのも何だが、数回で妊娠させよというのは、やはり無理があるし、10回より多く続けた人で言えば、95/157となり、60.8%となる。鍼灸は産婦人科でうまくいかない人が9割以上を占める中、この率は高いと考える。
さて次に高度生殖医療ART段階の成績である。鍼灸に来院される方々には過去のART不成功で来られる方がたくさんおられる。大体3回(採卵回数とする)くらいうまくいかないと、その後のARTでの妊娠率は1割程度に低下するとも言われている。過去に採卵成績を比較したデータを出したが、過去にARTの反復不成功で来院された方は、平均3回以上の経験者であり、そういう方が多数を占めているが、当院でのその後の成績は、
となる。
ほんの少数回で通院を止めてしまわれた方は、全体の1割未満だが、これらの中にも、また他の中にも、胚盤胞が取れているにも拘らず、転居その他で通院が中断してしまった方も含まれるので、この中にも妊娠者はでているはずだが、確認は出来ていないので「非妊娠」に含まれている。
とりあえず、すぐに止めた方も含んで58%が妊娠されている。そして10回以上の通院者では63%が妊娠に至っている。
日本中の不妊を謳う鍼灸院で、数百単位の患者さんの統計で、これ以上包み隠さず出しているところは本当に数少ないと思う。どうか院選びの際に、参考にしていただきたい。
そして鍼灸師が見ているなら、自院のデータと比較していただきたい。
当院では、ARTによるものもよらないものも、1回で通院を止めた方も含めた全新患を対象に過半数が妊娠されている。
ちなみに、このデータは治療を終了された方ばかりだが(継続中はデータ化できないので当たり前)、計六百人ほどの妊活患者さんで、1回で治療を止められた方はたったの6人である。これも自院のデータと比較されたらいいと思う。
そして自院のデータと比較するために、敢えてこの表を会場で写メに撮ってもらった。帰宅されてから、よくよく比較して頂けたらと思う。
先日の低AMHなど、シビアな方がたくさんおられる中で、とりあえず当院に来られてしっかり治療を受けられたら、過半数が妊娠されている、という事実は揺るがない。
それは偶然ではなく、しっかりとした再現性を有するために、この率が低下することはほぼありえないだろう。その根拠はまたの機会に。
また一人目、二人目と授かられる方も多いので、妊娠回数はこれより遥かに上回る。
私は耳あたりの良い言葉は嫌いです。そんな記事を書きたいとも思いません。だからやさしい言葉で包むような事は言いません。女性はふとした優しさに弱い時があります。でも優しさに包まれるだけで妊娠できるなら、ここまで苦労する人が多いわけはないでしょう。
生殖医療の中で鍼灸がしっかりとした立ち位置を得るためには、癒やしとしての鍼灸ではなく、医療としての鍼灸を追求していかなければならないと、常に肝に銘じています。