すっかりショウ君のペースに乗せられて……。

そりゃ、おいらだって好き……なんだけど……。

ベッドの上の練習は念入りに行われ、

すっかり踊れなくなちゃったおいら達。

ベッドで微睡んでるけど、時間はまだ夜の7時。

お腹も空いてきた。

そろそろ夕飯作らなくっちゃ……。

突然、おいらの携帯が鳴って、うつらうつらしていたおいらの目が、パッと開く。

ごそごそと手を伸ばそうとすると、ショウ君の手に遮られ、

「サトシ、おいで。」

「でも、電話……。」

「いいから……。」

「あっ。」

おいらを抱き込むショウ君。

「仕事かも！」

おいらはショウ君の腕の中から手を伸ばす。

それを見たショウ君が、仕方ないなぁって感じで腕の力を緩める。

仕方ないのはショウ君なのに。

不満そうなショウ君の顔がおかしくて、笑いながら携帯を取る。

見ると、田村さんで。

ショウ君に見せて、携帯をタップする。

「もしもし。」

「あ、大野さん？」

「うん、お疲れさま……あ、今日は休み？」

「休みなんだけど、仕事でちょっと出てて……今帰り。」

田村さんが笑いながら、続ける。

「花沢さんの方、落ち着きました？」

「うん、あっちは全部終わって、後は当日にちょっと顔出してお終い。」

ショウ君が、指先でおいらの髪を払う。

その触り方が優しくって、ゾクッとする。

「じゃ、落ち着いてるんですね？よかったよかった。」

田村さんが何か言いたげな間を持たせる。

その間も、ショウ君の指が顔中を這う。

くすぐったくて顔で嫌がると、ショウ君の目が楽し気に細くなる。

あ、意地悪なこと、考えてる？

近づいてくる唇……。

待って。

今電話中……。

目でダメって送ったけど、ショウ君が気にするわけもなく……。

「ちょっと……お願いしたいことがあって……。」

田村さんの言葉と、ショウ君の唇がおいらのこめかみに着いたのは同時で、

おいらから、あっとも、えっともつかない声が飛び出す。

「お、お願い？」

「……あの、できればでいいんだけど……。

　いや、やっぱり忙しいよね……。」

ショウ君の舌が生え際をなぞる。

「あ、だ、大丈夫だよ……。」

「いや、やっぱり止めとく。」

「いいよ、言って。田村さんにはお世話になってるんだもん。

　何でも言って。」

おいらはできるだけ元気な声を出す。

でないと、どんな声が出るかわからないから。

っもう！ショウ君のバカ！

「じゃ……。来月ね、佐々木の誕生日なんですよ。」

「誕生日？」

会話が続いてるのに、どんどんエスカレートしてくショウ君。

ショウ君の左手がおいらの腰を引き寄せ、右手が背中に回る。

「あ……。」

「どうしました？」

「え、あ、なんでもない。誕生日がどうしたの？」

顔を赤くしてショウ君を睨んだけど、ショウ君はそれが楽しくてしょうがないみたいで、

生え際を這っていた舌が、今度は首筋に移動する。

「やめ……。」

「や……め？」

田村さんの怪訝そうな声。

「な、なんでもない！誕生日、お祝いするの？」

「そうそう、お祝いにね、カードを送ろうと思って……。」

「あ、そのカード、おいらが描こうか？」

「え？いいんですか？」

「いいよ、いいよ。ショウ君も佐々木さんにお世話になってるし。」

佐々木さんの名前に、ショウ君の顔が上がる。

「そこにね、書いて欲しいことがあって……。」

「書いて欲しいこと？」

「ん……まぁ、何と言うか……。一緒に暮らしたいなぁと思って……。」

話しながら、顔を赤くしてる田村さんが見えるよう。

「あ、前に言ってたね。じゃ、……結婚？」

おいらは言いながらショウ君を見る。

ショウ君も、「結婚」の言葉が気になったのか、携帯に耳を近づける。

「いや、それは……。

　俺達は結婚に拘ってないから。

　でも、人生のパートナーは佐々木かなって思ってて……。

　たぶん、あいつもそう思ってくれてると思うんだけど……。

　とりあえず、まずは一緒に暮らしてみようかなと……。」

「そっか……。でも、引っ越しが大変だって……。」

「だから、時間もかかって……、なんとか手ごろなのを見つけたから、

　誕生日プレゼントは、鍵と引っ越し屋の無料チケットにしようかと……。」

「すごい！佐々木さん、きっと喜ぶよ！」

「喜んでくれるかな？」

「もちろん！」

田村さんが照れ臭そうに笑ったのがわかって、おいらもなんだかほっこりする。

「いつまでに描けばいい？」

「来月なんで、そんなに急がなくても……。簡単な物でいいですから。

　大野さんが描いたってだけで、飛んで喜ぶはずだから。

　もちろん、仕事優先でお願いします。」

田村さんが嬉しそうに笑う。

田村さんがこういうお願いしてくれるのは初めてで、おいらもなんだか嬉しい。

ショウ君に目をやると、ショウ君が意地悪そうな顔をした。

あ、ショウ君、佐々木さんに言っちゃダメだからね！